『ジキル博士とハイド氏』あらすじネタバレ考察・徹底解説!
イギリスの小説家、スティーブンソンの名作『ジキル博士とハイド氏』。
二重人格の代名詞的小説としても有名な作品ですが、読んだことがある人は少ないのではないでしょうか。
今回はそんな本作のあらすじを簡単に要約し、ネタバレ考察していきます。
是非最後までご覧ください!
『ジキル博士とハイド氏』概要
・『ジキル博士とハイド氏』とは
『ジキル博士とハイド氏』はイギリスの小説家であるロバート・ルイス・スティーブンソンにより1886年に発表された怪奇小説です。
英名では『The Strange Case of Dr. Jekyll and Mr. Hyde』で、直訳で”ジキル博士とハイド氏の奇妙な物語”となります。
本作は今日でも「ジキルとハイド」として親しまれ、二重人格をテーマにした斬新な作品として有名です。
その舞台は19世紀のロンドン。
弁護士のアタスンが旧友である高名なジキル博士の元に出入りする醜い小男・ハイドの正体を探っていくうち、衝撃の真実が明らかになる…といったストーリーです。
怪奇小説なのでじわじわと恐怖が迫るホラーテイストを感じるところもありますが、「ハイドとは何者なのか」という謎を追うミステリー小説としても人気です。
・著者、スティーヴンソンとは
作者のロバート・ルイス・スティーブンソンについても見ておきましょう。
1850年、イギリスのスコットランド、エディンバラに生まれたスティーヴンソン。
17歳の時エディンバラ大学に入学し、土木工学や法学を学んだ後、弁護士の資格を取得します。
その後は弁護士として働きながら、元々好きだった執筆活動を続けていきますが、スティーヴンソンは若いころから病を患っており、療養のため各地を転々としていたそうです。
そんなスティーブンソンの代表作には1883年発表の冒険小説『宝島』があります。
次に発表されたのが『ジキル博士とハイド氏』ですが、テイストの違いから同じ作者の小説と知っている人は少ないようです。
『ジキル博士とハイド氏』の登場人物紹介
『ジキル博士とハイド氏』の登場人物を見ていきます。
ヘンリー・ジキル:医学博士・民法学博士・法学博士・王立科学協会会員などの肩書を合わせ持つ高名で有名な博士。勤勉で、人当たりの良い穏やかな性格。立派な風采、大柄な男性。
エドワード・ハイド:見る人を不快な気分にさせるような雰囲気の、醜悪かつ小柄な男。ある時からジキルの元に出入りするようになる。何故かジキルの遺産を相続することになっている。
アターソン:物語の語り手。弁護士で、ジキル博士、ラニョン博士とは旧友。顔がいかつく感情を表に出さない性格だが、優秀。どことなく人情味があり、周りから好かれ信頼されている。
エンフィールド:アターソンの遠い親戚(従弟)で紳士。毎週日曜日にアターソンと散歩するのを日課として楽しみにしている。ある日謎の男、エドワード・ハイドの蛮行を目撃してしまい、その話をアターソンにする。
ラニョン:高名な博士で、医師。アターソンとは昔からの友人であり、仲がいい。ジキル博士とも友人だったが、ジキル博士の考えや行動に不信を感じ始め、距離を置いている。
プール:二十年間ジキル博士に奉公してきた、ジキル博士の召使。
『ジキル博士とハイド氏』のあらすじ
・あらすじ(前半)
弁護士のアターソンはいとこのエンフィールドと共にロンドンの街を散歩していた際、エンフィールドから奇妙な話を聞く。
冬の午前3時ごろに醜悪な男と幼い少女がぶつかりそうになり、男が少女を踏みつけにしたという話だ。
抗議する住民たちに男は慰謝料を払うと小切手を持ってきたのだが、その署名は名高いヘンリー・ジキル博士だった。
男の名はエドワード・ハイドといい、アターソンがジキルから預かっていた遺言書にはジキルの死後の遺産はハイドに相続することになっていた。
アターソンはジキルがハイドに遺産をめぐって脅されているのではないかと考えた。
一年後、アターソンの顧客のサー・ダンヴァス・カルーという老人が殺されるという殺人事件が起こる。犯人はハイドだと断定されたが、それからハイドは行方不明となってしまう。
アターソンがジキルを訪ねると、ジキルは憔悴しきって「ハイドとは縁を切った」と言う。しかしハイドとジキルの筆跡が一致しているとわかり、疑惑が深まる。
・あらすじ(後半)
※後半は内容の大幅なネタバレが含まれます
一方アターソンとジキルの旧友・ラニョン博士はジキルと縁を切った後、程なくして死んでしまった。その時ラニョンはアターソンにジキルが死ぬか失踪するまで開けてはならないという封書を残した。
それからしばらくするとジキルは完全に周りとの交流を絶ってしまう。
ある日異変に気付いたジキルの召使プールと共に、アターソンはジキルの部屋を無理やりこじ開けた。
そこにはハイドの自殺死体があった。
一連の事件の真相は、ラニョンが残した封書の中の手記とそばに置いてあったジキルがアターソンに宛てた手紙で明かされる。
ラニョンの手記には、ラニョンの前でハイドがジキルに変身する一部始終を見たという事実が書かれていた。
そしてジキルから残された手紙には、ジキルが昔から善良な部分と抑えられない醜悪な快楽癖を持ちその二面性に苦しみを抱えていたこと、そのため自分の悪の部分を切り離す薬剤を開発し、善と悪の人格を分けることに成功したこと。
しかしやがて薬剤ではコントロールできなくなり人格がハイドに浸食されていることが書かれていた。
最期を悟ったジキルはハイドに代わってしまう前にこの手記を残し、自殺を図ったのだった。
『ジキル博士とハイド氏』考察
・ジキル博士がハイドを生んだ理由は?
ジキル博士は元々善良で勤勉な自分と、欲望を意のままに開放したい快楽癖との葛藤を抱え苦しんでいることは作中にも書かれています。
ジキル博士はそうした”善”と”悪”の部分を切り離せば、善の自分が喜んで善行を、悪の自分で醜い欲望を開放できると考えました。
そうして薬剤を開発し、ジキル自身はこれまでと変わらず善い姿を。変身した悪い人格のエドワード・ハイドで自分の快楽を満たすことに成功するのです。
しかし多くの考察にあるように、ジキル博士は善性だけを持つ人間ではありません。
欲望を意のままに開放したいという欲求を持っているのもまたジキル博士なのです。
つまりジキル博士が開発した薬剤で出来上がったのは善悪の二面性を合わせ持つジキルと、完全な悪であるエドワード・ハイドだったということです。完全に善良なジキルは存在しません。
物語後半ではハイドになるのが楽しくなっていたり、善行を行う自分に愉悦を感じるところなどが見られます。
欲望に走った結果ハイドを生み出し、元の理性ある自分に戻ることができずハイドに浸食されてしまったのかもしれません。
・『ジキル博士とハイド氏』は二重人格の小説ではない?
前置きしたように『ジキル博士とハイド氏』の興味深い点は二重人格を題材にしているという点であり、二重人格の代名詞ともなっています。
ですが現代でいう「解離性同一性障害」のような二重人格とは少し意味が違ってきます。
この小説はあくまで人間の”二面性”の部分を扱っています。
二面性というのはジキル博士だけでなく、人間ならば少なからず誰でも持っている性格の部分をさしますから、今日の二重人格と違います。
ちなみに表面上だけ善いように見える人のことを「ジキルとハイドのような人」などと表現されることもあるようです。
・モデルとなった話がある?
『ジキル博士とハイド氏』には複数のモデルとなった人物が存在するそうです。
その中の1人がエディンバラの家具職人で、エディンバラ市議会の評議員も務めたウィリアム・ブロディです。
彼は昼は真面目な紳士としてふるまい、夜は借金を返したり生活をやりくりするために強盗犯として約6年間過ごしたそうです。
最終的に捕まり自らが手掛けた絞首台により人生の幕を閉じました。
『ジキル博士とハイド氏』自体がこの時代にしては突飛な発想だと感じましたが、この事件などから着想を得ていたと考えれば納得できるところがありますね。
小説・映画・ミュージカル情報など
『ジキル博士とハイド氏』は当時大ヒットしてから様々なメディア展開を見せています。
まず原作を楽しみたいという方におすすめの小説をご紹介します。
ジキルとハイド (新潮文庫) | ロバート・L. スティーヴンソン, Stevenson,Robert Louis, 俊樹, 田口 |本 | 通販 | Amazon
こちらは定番の新潮文庫のものです。
ジキル博士とハイド氏 (創元推理文庫) | ロバート・ルイス スティーヴンスン, Stevenson,Robert Louis, 健次, 夏来 |本 | 通販 | Amazon
こちらも読みやすいと評判の一冊となっています!
つづいては映画の紹介です。
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こちらが映画作品となります。1931年に同名で映画化されたものをリメイクした映画となっているようです。
他にも『ジキル博士とハイド氏』は様々な映画化がされており、見比べてみるのも楽しいかもしれませんね。
最後に、もう終わってしまいましたが最近上演されていたミュージカルの公式サイトです。
もし興味があれば調べてみてください。
このようにいろんな方面から触れることができる作品ですので、よければ手に取ってみて下さい。
『ジキル博士とハイド氏』感想とまとめ
『ジキル博士とハイド氏』は何度も読んだ作品であり、そのたびに「善悪とは」という点について考えさせられます。
考察でも触れましたが善悪というのは誰でも持っているものです。
ジキル博士のようにいい人そうに見えて実は悪いことがしたいという欲望を持っている人も少なくないかもしれません。
人間は常にそんな感情や欲望と、理性との葛藤を抱えながら生きていますがそのバランスを保つのはとても難しいことのように思います。
そしてその葛藤を抱えてこそ人間味を感じるとも思うのです。
もし自分の中に生まれた善悪に悩んだ時、『ジキル博士とハイド氏』を読んで考えてみると、見えてくるものがあるかもしれません。