ドストエフスキーの名作『罪と罰』あらすじは?名言・伝えたいこと解説
すごいと言われるドストエフスキーによる名作『罪と罰』のあらすじや名言、伝えたいこと・感想も含め簡単に解説しました。
「天才や選ばれた人には殺人を犯す権利があるか?」というテーマは、私達も考える必要があります。
解説を読んで気になった方は是非読んでみて下さい。
『罪と罰』概要
・『罪と罰』とは
『罪と罰』はロシアの文豪フョードル・ドストエフスキーによって1866年に発表された作品です。
物語はサンクトペテルブルクを舞台に、主人公ラスコーリニコフが起こした殺人事件を中心に進んでいきます。
この作品は彼のキリスト教を主軸とした思想や犯罪、社会問題への考え方が色濃く描かれています。当時のロシアを作品から感じることもできます。
また登場人物の心理描写は逸脱で、ラスコーリニコフを取り巻く人間ドラマも見どころの一つとなっていますよ。
・著者のフョードル・ドストエフスキーとは
フョードル・ドストエフスキーは本作『罪と罰』を含んだ『悪霊』、『白痴』、『未成年』、『カラマーゾフの兄弟』の5大長編で知られています。
『罪と罰』はその中でも一番初めに書かれました。
ドストエフスキーは社会主義サークルに所属していましたが、そのサークルが検挙され死刑判決を受けます。しかし死刑執行の直前に恩赦により減刑され、窮地を逃れました。
その際聖書に触れたことから、釈放後は様々な苦難に見舞われながらもキリスト教をテーマとして創作活動を続けています。
『罪と罰』もまた、キリスト教の影響を受けた作品の一つなのです。
『罪と罰』の登場人物紹介
『罪と罰』は登場人物が多いですが、主な人物はこちらになります。
ラスコーリニコフ:本作の主人公。頭脳明晰な美青年だが、貧困のため大学を中退した。選ばれた人間は犯罪をしても許されるという思想を持っている。
ソーネチカ(ソーニャ):貧しい家族を助けるため体を売る心優しい娼婦の少女。作中の重要人物。
アリョーナ:強欲で名高い高利貸し(金貸し)の老婆。妹のリザヴェータと共にラスコーリニコフに殺される。
ポルフィーリィ:予審判事(事件を受け、法の下予審の手続きをする裁判官)で、アリョーナ・リザヴェータ殺害事件を追う。ラスコーリニコフを疑っている。
『罪と罰』のあらすじ
あらすじ(前半)
大学生のラスコーリニコフは貧しいために大学の学費も住んでいる場所の家賃も滞納していた。
そんな彼は金貸しの老婆アリョーナを頼りに、価値のある私物と引き換えに金を貸してもらいに行く。
しかしアリョーナははした金しかくれず、憤ったラスコーリニコフは自身の「選ばれた人間は社会をよくするためならば道を踏み外してもよい」という思想の元犯罪計画を企てた。
決行の夜、ラスコーリニコフは計画通りにアリョーナを殺すことに成功するが、そこに偶然居合わせたアリョーナの妹リザヴェータをも口封じに殺してしまう。
この事件をきっかけに意図しない殺人までも犯してしまったラスコーリニコフは罪悪感で精神を病んでいく。
あらすじ(後半)
※後半はストーリーの大幅なネタバレが含まれます
一方この殺人事件の予審判事ポルフィーリィはラスコーリニコフを怪しんで調査していた。
ポルフィーリィは過去にラスコーリニコフが執筆した論文を読んでラスコーリニコフが殺人事件の犯人であると結論付ける。
その後何度もラスコーリニコフと対峙するも、決定的な証拠がないため逮捕できずにいた。
ラスコーリニコフは逮捕を免れるが、ますます罪の意識に苛まれる。
そんな時に出会った娼婦のソーネチカ(ソーニャ)は家族のためなら苦しい生活も構わないという、自己犠牲をいとわない少女だった。
そんな彼女の思想、そしてその生き方に惹かれ心を動かされたラスコーリニコフは、とうとう自首を決めた。
彼はシベリア送りという重い罪を課されることとなる。そんなラスコーリニコフを追いかけ、ソーニャもシベリアへ移住し出所を待ち続けるのだった。
彼女の深い愛情にラスコーリニコフの心は救われ、更生への道を歩みだす。
『罪と罰』の感想一覧
『罪と罰』を読んだ方々の感想を集めてみました。
・若い頃に読んでおきたかった本の一つである。
・長く難しい面もあったが面白かった。
・名前を覚えるのが大変だが、登場人物が魅力的
・最後に希望があり、救われてよかった。
などの感想が見られました。
『罪と罰』が伝えたかった事
・ラスコーリニコフの成長
『罪と罰』の本筋はラスコーリニコフが犯した殺人の罪、それによって受ける彼の罰のお話であることがわかります。
様々な問題提起はあれど、この物語はラスコーリニコフの成長物語であると考えられます。
犯した罪によってラスコーリニコフは犯罪者としての苦悩や葛藤に病んでしまいました。しかし彼は家族に、そしてソーニャの愛に救われ最後には更生しています。
『罪と罰』の話を通して罪を自覚し愛を知ったラスコーリニコフは最終的に人間として成長したということではないでしょうか。
・『罪と罰』が伝えたかったこと
このまず最初に提示したテーマ「選ばれた人間は犯罪・人を殺す権利があるのか?」に対し、どのような人間であれ犯罪をする権利も人を殺す権利もないということを伝えています。
またラスコーリニコフの成長、ソーニャによるキリスト教の愛や救いをよく小説の中に登場させていることから、「自らの深い罪の意識を自覚した者は無償の愛によって救われる」ということも考えられます。
作者のドストエフスキーが最も伝えたい箇所もここではないでしょうか。
『罪と罰』の名言
『罪と罰』の有名なセリフを集めました。
・「<<非凡>>な人間はある障害を…それも自分の思想の実行がそれを要求する場合だけ、ふみこえる権利がある……」 (ラスコーリニコフ)
→作中でラスコーリニコフが自身の書いた論文の中の思想を語るシーンでの発言です。
非凡な人間とは選ばれた人、天才のことで、障害とは法律や道徳などのことで、
「天才たちは自分の思想が実行されるために法律や道徳などの障害を踏み越えてもいい(=犯罪を許される)」
という意味になるでしょう。
ラスコーリニコフはこの思想のもと老婆を殺害したのでした。
・「お立ちなさい!いますぐ外へ行って、十字路に立ち、ひざまずいて、あなたが汚した大地に接吻しなさい、それから世界中の人々に対して、四方におじぎをして、大声で<<わたしが殺しました!>>というのです」(ソーネチカ(ソーニャ))
→犯罪を告白したラスコーリニコフに向かってソーニャがした発言です。
慈悲深い彼女がしっかり叱っているところから、ソーニャの優しさと厳しさが垣間見えるシーンといえるでしょう。
『罪と罰』の中ではよくピックアップされる、屈指の名言かもしれません。
引用:工藤精一郎訳,『罪と罰』,新潮社版,1987年
読みやすい翻訳は?漫画版も!
・読みやすい翻訳
『罪と罰』は様々な翻訳がありますが、その中でも一番メジャーなのは新潮社の文庫本のようです。
新潮社版の文庫本だと上下巻で読むことが出来ますよ。
・漫画版
やっぱり文章が難しい・長い!と感じる方には漫画版がおすすめです。
舞台を当時のロシアのサンクトペテルブルクから現代日本に置き換えた設定となっています。
より読みやすく、わかりやすいです。
他にも、『罪と罰』解説本があったり、ロシアでは大河ドラマ化、日本でのミュージカル化などもあるようです。
まとめ
ここまで『罪と罰』の内容を詳しく解説してきました。
この作品は深いテーマを取り上げており、犯罪者である主人公の心理を細かく描き切っています。
そのため難解な印象を与えてしまいがちですが、『罪と罰』の提示するテーマはすべて現代社会の私たちも考えていかなければならないものだとも思うのです。
『罪と罰』を読み貴方も犯罪について、それに伴う様々な問題について考え直してみるのはいかがでしょうか。